【ウッドデッキの専門家に聞いた】
2024.07.10
自宅で過ごす時間が増えた近年、庭をはじめエクステリアへの関心が高まっています。
なかでもウッドデッキとフェンスは、家の印象を大きく左右するポイントとして注目を浴びています。しかしだからこそ迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
「ウッドデッキを設置したいけれど、どんな素材がいいの?」
「設置後のメンテナンスに苦労しそうだし、劣化や耐久性も気になる……」
「DIYだと作るのがむずかしそう、専門業者に依頼すると費用がかさみそう」
こんな疑問やお悩みはありませんか?
わざわざ作るなら後悔なく、愛着を持って長く使えるウッドデッキにしたいと思うのは当然でしょう。
そこで今回は4500件以上のウッドデッキを作り上げてきた神奈川県横浜市の『ウッディ企画』中村社長にお話しを伺いました。
使用素材とそれぞれのメリット・デメリット、天然木と人工木の比較、見落としがちな注意点までお届けします。
ウッドデッキとフェンスは使い方や目的を考慮!
― いまやウッドデッキはあちこちのご家庭で目にします。湘南エリアでもその人気は高いのでしょうか。
中村社長(以下 中村):湘南エリアはもともとウッドデッキの人気が高く、以前から一般のご家庭でもよく見かける設備でした。海が近い・自然が多い土地柄もあるのでしょうが、人気はいまも衰えませんね。
― ついデザインや見た目を優先しがちですが、使い方もしっかり考えた方がいいのでしょうか?
中村:ひとくちにウッドデッキやフェンスと言っても、使い方・目的によって完成形は異なります。たとえば「外からの視線をどの程度さえぎるか」でも違った仕上がりに。テラスと組み合わせてくつろぎの場にするなら開放感を、物干しスペースなら外からの見えにくさを考慮する必要があるでしょう。プライバシーをどの程度気にするかでも変わります。こうした使い方や目的の違いはスペースの取り方・動線・素材選びにも大きく影響します。特に素材には特徴があるため、しっかり理解したうえで選択するのがベストでしょう。比較検討の際は、価格やデザイン力だけでなく、素材もきちんと選定してくれる会社がおすすめです。
ウッドデッキで使用する素材は?
― ウッドデッキにはどんな素材が使用されているのでしょうか。
中村:大きく分けると、天然木と人工木の2種類が使用されています。天然木は字のごとく天然の木材。皆さんがイメージする木材とそう違わないと思います。天然木は、硬さ(比重)からソフトウッドとハードウッドの2種類に分けられます。ハードウッドは概ね比重が1.0前後の木材をさします。
― ハードウッドとソフトウッドの代表的な樹種をおしえてください。
中村:ソフトウッドは針葉樹系のスギ・ヒノキ・マツなどがよく知られてます。やわらかく加工も簡単な樹種です。ハードウッドはウリン・イペ・イタウバ・セランガンバツ等、硬くて重い広葉樹系の木材です。ウッドデッキに使われるハードウッドは、多くが東南アジアや南米からの輸入材です。
― 人工木はどんな素材ですか。
中村:人工木は、主に大手メーカーさんが提供しているものが多く、プラスチック素材と木粉を混ぜ合わせて作ったハイブリッド建材です。天然木の風合いに似せて作られてますが、天然木の風合いとは別物と考えてください。メーカーごとに色や擬木目のバリエーションも異なってます。メンテナンスが比較的楽で腐りにも強いです。メーカーさんが用意している規格サイズ(モジュール)でお庭先に設置する場合は、ネットショップがお手頃な価格で提供しています。
― なるほど、天然木と人工木は似て非なる素材なんですね。選び方のポイントはありますか。
中村:当然どちらにもメリット・デメリットがあり、後々のメンテナンスも変わります。重視する箇所は人によって違いますし、一概に「これ!」とは言えません。できれば実際に見て触って納得してから決めた方がいいと思います。肌ざわりや質感にこだわる人は、ショールームで確かめるのがおすすめです。
・ウッドデッキに使われるのは、天然木と人工木の2種類が主。
・天然木は硬さから「ソフトウッド」と「ハードウッド」。
∟ソフトウッド:やわらかく加工しやすい。
代表的な木材は針葉樹系のスギ・ヒノキ・マツ。
∟ハードウッド:硬くて重い、重厚感あり。
代表的な木材は広葉樹系のウリン・イタウバ・イペ・セランガンバツ。
・人工木はプラスチックと木粉などを混ぜたハイブリッド建材。
メンテンナンスが楽
で腐りにくい。メーカーが用意する規格サイズで作るなら、お手頃価格な業者も。
天然木のメリット・デメリット
― 天然木を使用する際のメリットをおしえてください。
中村:天然木のメリットは、なんといっても木ならではの風合い・質感でしょう。年を経て劣化しても、人工木ほどいたみが目立たず、色味が変化していくのも味があります。時とともに違う表情を見せるのも木材ならではの魅力です。もし色の変化が気になる場合は塗装で対応できますしね。
― 天然木のデメリットは?
中村:立地や環境によって生じる腐食ですね。人工木でも天然木でも腐食の可能性はありますが、特にソフトウッドは、木材そのものに何らかの防腐処理をしていないと、塗装していても10年以内に腐りが発生することが多いです。ソフトウッドを使うのであれば、ACQなどによる防腐・防蟻処理された資材を選ぶことが必須です。ハードウッドは、そのまま使用しても耐久性が高い木材ですが、価格面で言えば、ハードウッドの多くは輸入材の価格高騰により、ソフトウッドや人工木より割高になる点がデメリットだと思います。
【メリット】
・天然木は木ならではの風合いと質感が魅力。
・年を経るごとに違った表情に変わっていくのも味がある。
【デメリット】
・ソフトウッドの場合、防腐・防蟻処理がしっかりされていないと腐食リスクが高
まる。
・ハードウッドの多くは輸入材のため、ソフトウッドや人工木よりも割高になる。
ハードウッドの特徴
― ハードウッドならではの特徴はありますか。
中村:ハードウッドは非常に硬く耐久性が高いため、以前から公共施設や商業施設のウッドデッキに使われてきました。耐用年数も長く、ウリン・イタウバ・イペはおおむね20年程度、セランガンバツは15年程度と言われています。その耐久性から現在では、個人のお宅にも広まっています。
― とても丈夫で強い素材なんですね!
中村:天然木ですから劣化はするのですが、劣化速度はソフトウッドに比べて緩やかです。木材自体の密度が高いため、ひび割れが目立ちにくいのも嬉しい点ですね。
― 経年による色の変化はどうでしょう。
中村:ハードウッドの場合、色は大きく変化します。新品材はきれいな茶色ですが、2~3年でシルバーグレイに変色します。ここは好みが分かれるところですね。もちろん塗装してもいいのですが、ハードウッドの特性上、塗料が浸透しにくいので色の保持性は低くなってしまいます。
― 魅力的な素材ですが、考慮しておくべき点はありますか。
中村:価格ですね。ウッドデッキ用のハードウッドはそのほとんどが輸入材。近年は価格上昇が著しく、3年前の約1.5倍に高止まりしています。入荷状況も不規則なので、ほしい樹種と部材が欠品している場合も。硬さから加工費も割高になるため、余裕を持った予算組みが必須です。
― 硬さが加工を難しくしてしまう一面もあるんですね。
中村:反りや曲がりが発生したときに矯正できない点もハードウッドらしい側面です。そうしたケースでは部材の交換が必要に。屋上ウッドデッキなど日差しの強い場所では反りの発生が多いため、設置場所との相性も考えた方がいいでしょう。
【ハードウッド】
・公共施設や商業施設のウッドデッキにも使われるほど硬さと耐久性が◎。
・密度が高いため、ひび割れても目立ちにくい。
・2~3年で茶色からシルバーグレイに色が変化していく。
・輸入材が大半を占め、近年では価格上昇が著しい。
・入荷状況が不規則なため、ほしいタイミングで樹種や部材が欠品する場合も。
・硬さから加工費が割高に。
・経年劣化で反りや曲がりが発生しても矯正できない。部材交換で対応に。
ソフトウッドの特徴
― ハードウッドに対し、ソフトウッドはいかがでしょう。
中村:繰り返しですが、ソフトウッドは軽くやわらかい木材です。加工しやすくさまざまなデザインに対応できます。狭小地や変形サイズのウッドデッキにも対応が容易です。また塗装も簡単なので、お好みの色で楽しむのも良いですね。日曜大工が趣味で、電動工具をお持ちの方ならDIYの挑戦も可能です。
― ハードウッドは手を加えずにそのまま部材として使うと聞きました。ソフトウッドも同様なのでしょうか。
中村:ウッドデッキは日光や雨風にさらされる過酷な環境に設置されます。ソフトウッドの場合、木材を素の状態で使用すると、ほとんどの場合5~10年以内に一部に腐食が発生します。いくら塗装をほどこしていても、です。 ソフトウッドを使用する場合は、ACQ加圧注入材など適切な防腐・防蟻処理をほどこした木材を使うべきです。ACQ加圧注入材は塗装なしでも平均20年は耐腐食性が保てると公的機関で実証されています。これはウリンなどのハードウッドに匹敵するレベルです。
― きちんと防腐・防蟻処理された素材なら、ハードウッドと遜色なく長く活躍してくれそうですね。
中村:比較的価格も加工費用も落ち着いていますしね。ですがソフトウッドは経年劣化によるひび割れ、節抜けなどが目立ちやすいので、その点は留意しておくべきでしょう。
【ソフトウッド】
・軽くやわらかいため、加工がしやすくさまざまなデザインに対応可。
・変形サイズのウッドデッキにもおすすめ。
・ACQ加圧注入材など適切な防腐・防蟻処理をほどこした木材を使うべき。
・経年劣化によるひび割れ、節抜けが目立ちやすい。
人工木のメリット・デメリット
― 人工木のメリットをおしえてください。
中村:害虫が付きにくい、腐りにくい、メンテナンスが簡単な点が大きなメリットです。簡単な汚れは水を流して洗えますし、ササクレができないのも安心です。構造体はアルミ製品なのでやはり腐りません。ただし床板とか幕板などは「腐りにくい」のであって、設置後10年ほどで腐食が発生してしまったデッキもあります。
― 価格はいかがでしょう?天然木よりも安く手に入るイメージがありますが……
中村:メーカーさんが用意している規格サイズ・モジュールで作る場合は、ネットショップなどでは比較的手頃な価格で販売されています。そうした場合は天然木より安価な場合もありますが、変形サイズになると大幅にコストアップするケースが多いです。2階バルコニーや傾斜地、車庫上などのハイデッキでも同様です。
― イレギュラーなサイズになるとコストアップしてしまうのですね。盲点でした!
中村:人工木ウッドデッキはメーカーさんの工業製品ですから、メーカー規格から外れた時の自由度の低さは弱みと言えますね。人工木の場合、デザインや立地によっては施工が難しいシーンもあります。
― ハードウッドと同じく、強みが短所にもなり得るわけですね。
中村:また人工木特有のデメリットがあります。人工木ウッドデッキは床の表面温度が高くなりやすい点は留意点の一つです。陽当たりの良い場所では、夏場、表面温度が50~60℃以上になり裸足で歩けないほど熱くなります。照り返しも強く日焼けや暑さのもとになってしまいます。
― 真夏だけと思いがちですが、最近は夏日・猛暑日の期間が長いので気を付ける必要がありそうです。
中村:熱は表面温度だけでなく、素材自体も変性させます。素材の収縮が大きいため、デッキ設置から10年以上経つと床材の中空部にひび割れが発生するケースも確認できます。人工木だと割れや裂けは味わいにはならず、荒れた印象が強くなってしまうでしょう。
さらに熱は退色の一因にも。プラスチック製品をずっと外に置いておくと、いつの間にか色あせたりひび割れたりしてしまうでしょう?それと同じ現象が起きます。樹脂部分の劣化で白っぽさが増して、古ぼけて見えてしまいます。
【メリット】
・害虫が付きにくい・腐りにくい・メンテナンスが簡単。
・ササクレができない。
・規格サイズなら天然木より安価で手に入る場合がある。
【デメリット】
・変形サイズになると大幅にコストアップしがち。
・デザインや立地によっては人工木での施工が難しいシーンも。
・表面温度が高くなる。夏場の陽当たりが良い場所では50~60℃以上になることも!
・熱の影響を受けやすく、ひび割れや退色劣化が進みやすい。
ウッディ企画のおすすめは天然木!
― 天然木・人工木それぞれの特性を見てきましたが、おすすめはありますか。
中村:目的や使い方に加え、ご希望や好み・立地もあるので一概には言えませんが、当社では「天然木」をおすすめしています。
― 天然木にはハードウッド・ソフトウッドがありますが、どちらを使うケースが多いのでしょうか。
中村:当社では使い方や目的にあわせて選択していますが、多くはソフトウッド、国産のスギやヒノキ材のACQ加圧注入材を使用しています。変形地や傾斜地での施工も多いので。
― ACQ加圧注入材など防腐・防蟻処理済みの木材なら長持ちするとおっしゃっていましたね。
中村:適切な防腐防蟻加工が施された木材なら、費用を抑えつつ、ハードウッド並みの耐久性があります。ノーメンテナンスでも15~20年ほどは持ちます。社内の過去10年の統計では、腐食件数は年間で0.5%ほどと非常に低い数値となっています。具体的な数でお伝えすると、4500件の施工に対し毎年2~3件程度です。
― トラブルの件数が少なく驚きました!天然木により興味が湧きました。
中村:人工木にも利点はあり、だからこそ進化を遂げつつ多くの場所で使われています。ただ天然木の魅力も忘れてはいけないと思います。ぬくもりや一つ一つ違う表情、肌触りは人工物には作り出せない味わいです。価格やメンテナンスの頻度から天然木を諦めてしまう方もいますが、企業努力で以前よりもハードルは下がっています。諦める前にぜひプロへ相談してみてほしいと思っています。
ウッディ企画の庭園ウッドデッキは30年もの
― 横浜本社には経年変化を確認できる庭園ウッドデッキがあり、一般の方も見学できるとか。
中村:当社のウッドデッキは30年以上前に設置されました。年に1度、高圧洗浄は行なっていますが、大掛かりなメンテナンスは1回も行なっていません。実際に見て触って確かめていただければ、どんな写真やデータよりも私たちの仕事を理解していただけると思います。
― 百聞は一見に如かず、ですね。
中村:ウッドデッキの多様な天然木素材もご案内できますし、各木材の経年具合も確認できます。時を経てどう変わっていくか確認いただくと、イメージもよりわきやすくなるのではと思います。やはり実物を見ていただくのが一番ではないでしょうか。私たちがあれこれ語るより、実物の方がはるかに雄弁です。見学は随時受け付けていますので、事前にご連絡いただければすぐにご案内します。
― 30年以上経つウッドデッキを見て触れる展示場はそうそうないと思います。
中村:私たち自身もその点に自信を持っています。寿命や耐久性に自信をのぞかせる会社さまは多いですが、実物を展示しているところは少ないと思います。ウッドデッキを検討している方は、ぜひ見学にいらしてください。
ウッディ企画
神奈川県横浜市青葉区奈良町2423-210
TEL:045-961-1592