湘南でオーダーキッチンをつくるなら【オーダー家具の専門家に聞いた】
2025.02.03

有限会社フリーハンドイマイ 代表取締役 今井大輔 氏
【キッチンをオーダーして作るということ その1】
ー 私がその人が使いやすいキッチンを作ろうと思う時に心掛けていること ー
「自分の理想のキッチンがしっかりイメージできている人は意外に少ないかも。」
最近はこの湘南地域にお住まいの皆様から新居には、自分の使いやすいオーダーキッチンを取り入れたいという声を頂く機会が増えてきました。
私たちとしては、自分たちの取り組みを良く評価して頂けることをとてもうれしく思っております。
ただ、キッチンを自分好みで作っていくとなると何から考えてゆけば良いのか見当がつかないとおっしゃる皆様もいらっしゃいます。
たしかに、オーダーだとどのような形でも実現可能という大きなメリットはあります。
「こんな素敵な天然素材が使えます。」
「とても機能的な食洗機を入れることができます」
「調理の動線がこれほど短い距離にすることができます」
いろいろなメリットをそこかしこで耳にすることがありますね。
すでに自分の思い描くイメージがきちんと定まっているなら、そこから取捨選択すると理想とする形に近いものを構築できるのだと思いますが、まだイメージが漠然としたままだなあ、とおっしゃる皆様には、はたしてそのいろいろなメリットだけでそれが自分の望むものなのかを思い描くことや伝えることってなかなか難しかったりします。
そこで私たちが考えるのは、その人の暮らしかたに合わせたキッチンを作ることを心がけるということです。

奥様一人で歩き回らなくても手が届くようなコンパクトなレイアウトでお料理がしたいということでコの字型のキッチンを実現したTさん。

Instagramを見て憧れていた海外の独創的なデザインを実現したいということで、美しい素材とレイアウトで叶えられたKさんのキッチン。
「キッチンのお話よりも暮らしかたのお話を。」
「オーダーで作る」ということは、キッチンそのものを好きな形に作ることだけではなく、その使う人の暮らしの一助になるような気配りというか目に見えない部分も一緒に作っていることが大事だと思っています。

キッチンの形だけではなく、その空間にキッチンやカップボードが置かれると、どのような動きが生まれるのだろう。朝の支度はこうして、夜はみんなの帰宅時間がバラバラだから・・、というお話をしながら、レイアウトを考えたりするのです。
こちらのKさんの場合は、キッチンが独立した部屋になっていて、その中をどういうふうに動くだろうと悩みました。奥様もご主人もお料理をされるので、二人の動線がなるべくぶつからないようにするために、どんなふうにお料理をするのかをお話しながら進めていったのでした。
具体的には、最初に「私たちがキッチンを作るとこのようなことができますよ。」というお話はあまりしないことが多かったりします。
だって、あれもできます、これもできますっていろんな可能性だけをお伝えしても、じゃあ私は何を選んだらよいのでしょう、と困ってしまうと思うからです。
代わりにお伺いするのは、まずはその人がその新しい家でどのような暮らしをしていきたいか、または、今まで過ごしてきたキッチンではその人やご家族皆さんがどのようにそこを使い続けてきたか、どのようにその場所で過ごしてきたか、なんていう暮らしかたのお話を伺うことが多いです。
そうすると、
「そうか、この人はこのキッチンをお一人で使いたいのだな。」
「お料理を作っている間は家族みんなでこちら側で過ごしたいのだな。」
「土鍋でご飯を炊くのなら、ガスコンロはこのあたりが使いやすいだろうな」
「キッチンの入り口がこちらなら洗面所はこのあたりにあるとみんなが使いやすく取れるのではないだろうか・・」
なんて話が広がったりして、その人のキッチンのあるべき姿が少しずつ見えてくるのです。

「こういうふうに使いたかったんだ!」って自分で持っている調理道具をどのようにしまったら使いやすいかいろいろと悩むことで自分の暮らしかたを振り返ることができて新たな発見があることも。

時には、家具ではない部分のお話にも話題は広がります。「こういうふうにみんなが通るならここにはこういうものをつけたいよね。」なんて暮らしかたがイメージできていくと、どんどんすてきな発想が生まれたり、みんなの過ごし方が分かってきたりするのです。

ちなみに私が自宅を建てた時にイメージしていたのは動線。玄関からキッチンを抜けて洗面所へ行く形なので、朝晩の慌ただしい時間がみんなごちゃごちゃしてしまいそうだから、ということでいろいろな通り道の工夫を。ぐるぐる回れるようにしておけば、みんなでぶつかることも少ないわけです。
「じつは会話をすることで自分の暮らしかたに気づくことがたくさんあります。」
もちろん、私一人ではその形を成り立たせることはできませんから、ここからは皆様との会話のキャッチボールです。
「今までのキッチンでこういうふうに過ごしてきたということはここはこういう形だと、こう使うことができそうですよ。」
「そうですね・・、でも新居ではこうしたいから、ここはこういう形にしてみたいと思います。」
もしくは、
「ここをこうすると帰ってきたときにここに荷物を置きながらこう使うことができそうですよ。」
「そうですね!それは今までの暮らしでも気が付きませんでした。」
はたまた、
「そうか!こういう動作が億劫だと思っていたからこの形を敬遠していたのですね。こうすることでこの動作が使いやすいことが分かりました!」
と、その人自身が気付かなかったことに気づくことさえできることもあるのです。
そして、いつのまにか自分がここでどう過ごしたいかのイメージがその人にも私にも同じ形が思い描けているのです。
図面やそこに使える機能と言った断片的な情報だけでは、なかなか形を思い描くことは難しいものです。
それをつなぎ合わせることがとても大事なのです。
それをつなぎ合わせるには、その人の暮らしに置き換えることが一番身近に感じてもらいやすいことなのではないかな。それをいつも心掛けることが大事なのです。
ですので、そういう思いをまとめるまでがオーダーキッチンを作っていく中で一番大切な部分と言っても良いくらい。
あとはその形を実現できるように素材や機能をまとめていくのです。
そのお話はまだ次回・・。
